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厳選レストラン編集局 連載特集

「ソワニエ」になる方法 レストランから得る最上級のステータス

「イレール」マダム兼ソムリエール 島田まき

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"身体にやさしいフレンチ"をコンセプトに掲げる、恵比寿の人気レストラン「イレール」。夫であるオーナーシェフ・島田哲也氏を支えながら、ソムリエール、料理研究家としても活躍する島田まきさんに、独自の視点からソワニエにまつわるお話をうかがいました。

島田まき氏

遊びを受け入れる余裕。それが上質なソワニエの条件。

…正統派フレンチレストランである「イレール」では、ワインと料理は切っても切り離せないもの。島田さんがソムリエール(女性のソムリエ)としての立場から見たときに、ソワニエのお客様とはどんな人なのでしょう?

ソワニエをはっきり定義づけるのはちょっと難しいですね。当店では私もスタッフも、すべてのお客様はソワニエであり得るという気持ちを常に持っていますから。ですが、ソムリエールという立場から考えてみると「上質なソワニエ="遊び心"があるお客様」と言えるかもしれません。

…"遊び心"とは具体的に何を指すのですか?

たとえば、何度かレストランに通っていただいてコミュニケーションを深めれば、その方のお気に入りのワインは把握できます。そういった好みを理解した上で、時にはあえてまったく違うテイストのものをお勧めしてみる。そこには、100%満足できるという保証はないかわりに、新しい味に出会えるという楽しさがあります。それを「へえ、なるほどね」と面白がって受け入れてくださる方、つまりキャパシティが広い方がソワニエと言える気がします。一歩進んだコミュニケーションを積み重ねることで、お客様との距離が近づき、私たち自身のサービスの幅も広がっていくんです。

店内イメージ

ワインの世界への入り口は味だけではありません。

…最近はワイン好きの若い女性も増えています。島田さんが行うワイン講座やイベントがきっかけで、「イレール」に来店してソワニエになるお客様も多いのでは?

そういったお客様も増えていますね。男女を比較すると、知識へのこだわりという意味では、男性のほうが一点集中でガーッと極める方が多い。一方、女性のセレクトは柔軟性があって浮気心もたくさん(笑)。その日の気分やラベルのデザイン、旅行で訪れた思い出の地のワインなど、型にはまらず自由なスタンスで選ばれる方がたくさんいらっしゃいます。

…ソムリエールの目から見て、ラベルでワインを選ぶというのは不純に思われませんか?

いえいえ、まったく構いません。ワインの価値は味だけじゃないんですよ。おいしいことは重要なんですが、ワインの知識があまりないという方には、「迷ったら気軽にラベルでお選びください」とお勧めしています。ラベルだって生産者がすごくこだわっている、いわばワインの"名札"。そう考えると、ワインの楽しみ方がぐっと広がるでしょう? ワインに限らず、入り方がどんな形であれ「食事の時間を目一杯楽しもう」という気持ちを持つこと。それがソワニエになる大事な要素だと思います。

料理イメージ

「イレール」改装の前夜。忘れられないロマネ・コンティ。

…「イレール」は今年でオープン11年目。ソワニエとの想い出も数多くあると思いますが、印象に残っているエピソードを教えてください。

今でも思い出すのは、数年前にお店を改装したときのこと。思い切ってインテリアの色やデザインを一新したのですが、その改装の前夜にあるご夫婦がワインのボトルを持って来店されたんです。

…そのご夫婦はお店の常連だったのですか?

ええ。開店当時はカップルとして、のちにご夫婦になられてからもお付き合いさせていただいている方たちで。そのお二人が「この内装での最後の夜だし、一緒に飲もうよ。お疲れさま!」という言葉と共にロマネ・コンティをプレゼントしてくださったんです。「ここは僕たちにとっても大事なレストランだから」とご自身の秘蔵のワインを開けてくださったんですね。その日の閉店後、お二人と私たち夫婦の4人でいろんなおしゃべりをしながら、ゆっくりいただきました。あのときは「長くお付き合いできるお客様は私たちにとって財産なんだ」としみじみ実感しましたね。

島田まき氏

シェフに一番近い存在。マダムの目から見るソワニエ。

…オーナーシェフに最も近い存在、マダムという立場から見て、ソワニエはどんな存在なのでしょうか?

料理は生き物ですから、ずっと同じということはありません。オープン当初と11年後の今とでは、シェフが年齢を重ねたことで洗練され、変化してきた部分がたくさんあります。ソワニエはその変化を敏感に感じ取り、マダムである私にきちんとコメントをくださいます。

…ソワニエにとってその変化が好ましい時も、逆にそうでない時もあるのでは?

そうです。けれど内容がどうあれ、長いお付き合いの流れを踏まえた上でのコメントなので、私たちも真摯に受け止めます。お客様から率直な言葉をいただくと、店として張り合いも生まれますし。ソワニエとの遠慮のないやり取りは、マダムをつとめているからこそできることです。「イレール」が思うソワニエとは、"太く短く"といったお付き合いの対極にあるもの。末永く店の成長を見守ってくださるお客様なんです。ロマネ・コンティのご夫婦もそうですが、最初はカップルでいらっしゃっていた方々がご夫婦になり、お子さんが生まれて今度はご家族で来てくださる…。そんなお付き合いが理想です。

料理イメージ

店の規模とコンセプトが決まれば、ソワニエの定義も定まります。

…島田さんはレストランプロデュースも手掛けてらっしゃいますが、店作りの視点からもソワニエの在り方を意識することはあるのでしょうか?

レストランは最初のコンセプトが非常に大事。ソワニエになっていただくお客様も、各店に応じたそれぞれの姿があるんです。高い料金でお客様に特別な時間を提供する店を目指すのか、それとも近所の家族連れが気軽に食事できる店にするのか…。お店を作るに当たり、自分が望むソワニエ像もしっかり決めておかないと、二兎を追って一兎も得ずの結果になってしまいます。長くお店を続けていくために、お店やスタッフを成長させてくれるソワニエはとても大切な存在であることを、常にアドバイスするようにしています。

…最後に、ソワニエになりたいと思っている読者にメッセージをお願いします。

まずは自分のお気に入りの店を見つけることですね。お気に入りのレストランというのは、料理、サービス、空間のバランス、そして自分に合うか合わないかで決まるもの。だから、人のお勧めではなく、素直に自分に合うと思えるお店を探すことが大事です。あとは1回の訪問でジャッジを下すのではなく、何度か通っていただきたいですね。「この方はいつも食前酒はシャンパン」「ポーションが少なめのお客様だ」など、お客様の情報が増えるほどこちらもよりスマートな対応ができますから。回を重ねることで享受できるプラスαのサービス、それもソワニエになる醍醐味のひとつではないでしょうか。



レストラン イレール
住所:東京都渋谷区恵比寿3−29−16 ABC ANNEXビル3F
電話:03-5475-6127
営業時間:11:30〜14:00(LO)、18:00〜22:00(LO)
定休日:火曜(祝日の場合営業/翌水曜休)
HP:http://www.irreel.jp/
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島田まきさんプロフィール
1972年、東京都生まれ。美術短大卒業後、料理好きが高じてフランス料理店に就職。
現在は「レストラン イレール」のマダムであると同時に、ソムリエール、料理研究家として活躍中。
レストランプロデュース、企業メニュー開発も手掛ける。

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